コミュニケーションとは

コミュニケーションとは、あなた以外の誰かが、あなたについて何かを感じたときに生まれます。そしてあなたがそれを反応として受け取った時、相互のコミュニケーションが成立します。コミュニケーションは意識的なときもあれば、無意識的なときもあります。
プロ・コーチのあおぞらさんと、コーチングに興味のあるどんぐりさんとの会話でコミュニケーションについて考えていきます。

どんぐりさん:あおぞらさん、今日はコミュニケーションについてのお話ですよね?

あおぞらさん:はい。どんぐりさんはコミュニケーションと聞いてどんなことを思い浮かべますか?

どんぐりさん:NTTとか、ITとか・・・通信の世界かな?

あおぞらさん:なるほど。それもコミュニケーションのひとつですね。

どんぐりさん:あ、あとはよく会社の人事考課のときに「コミュニケーション能力」という評価項目があったりしますね。あれって何ですかね?

あおぞらさん:そうですね。では考えてみましょうか。まず、どんぐりさんはコミュニケーション能力がすぐれている人ってどんな人だと思いますか?

どんぐりさん:対人関係がうまい人でしょうか。。。誰とでもうまくやっていけるような。。。あとは話がわかりやすい人もコミュニケーション能力が高いって言えるんじゃないかな。あとは話をして楽しい人もコミュニケーション能力あり、ですよね。

あおぞらさん:どんぐりさんは、誰とでもうまくやっていけたり、話がわかりやすかったり、あるいは話の面白い人がコミュニケーション能力の高い人だと感じるんですね。

どんぐりさん:はい。そうです。

あおぞらさん:では今の3つの要素の共通点ってなんでしょうか?

どんぐりさん:え・・・? 共通点ですか?

あおぞらさん:そう。

どんぐりさん:え~、何だろう・・・そう言われると難しいなぁ。。。何かヒントないですか?

あおぞらさん:では、どんぐりさんの周りの人で、どんぐりさんが考えるコミュニケーション能力の高い人を思い浮かべてみてください。

どんぐりさん:・・・はい。

あおぞらさん:その人の特徴は何でしょうか?

どんぐりさん:若葉さんっていうんですけど、いつも元気で、エネルギーにあふれてる感じです。あ、でもこれってコミュニケーションにあんまり関係ないですかね?

あおぞらさん:あ、いいですよ。コミュニケーションにこだわらず、その人の全体の特徴で大丈夫です。

どんぐりさん:あとは・・・そうだ、その人いつもおしゃれなんですよね。さりげなく趣味のいいスーツを着ているし、パーティのときなんかは、その場の雰囲気にあったおしゃれな装いで参加されるんですよ。

あおぞらさん:素敵な方ですね。そのほかにまだ特徴はありますか?

どんぐりさん:行動面についての特徴でもいいですか?

あおぞらさん:いいですね。教えてください。

どんぐりさん:若葉さんはとても行動的なんです。いつも楽しそうに、しかもてきぱき行動しています。無駄な行動がないっていうか・・・どうしてでしょうね。。。何かちゃんと自分の目標をいつももっているからかしら?

あおぞらさん:なるほど。若葉さんは目標を持っていきいきと行動しているんですね。でもどんぐりさん、よいポイントに気付きましたね。

どんぐりさん:え? そうですか?

あおぞらさん:はい。目標をいつも持っているって言ったじゃないですか。

どんぐりさん:ええ。若葉さんのことです。でも、今はたしかコミュニケーション能力の話でしたよね。。。何か目標と関係あるんですか?

あおぞらさん:これは私の想像ですが、若葉さんはいつも目的を持って行動しているようですね。

どんぐりさん:ええ、実際にそうです。あの人の行動にはいつもちゃんと意味があります。

あおぞらさん:若葉さんはきっと人と向かい合うとき、きちんと目的を持ってコミュニケーションをとっているのではないでしょうか。

どんぐりさん:・・・なんだか、まだぴんときません。

あおぞらさん:もう少し具体的に説明しましょう。例えば、どんぐりさんは若葉さんと話をしたとき、どう感じますか? 最近若葉さんと話をしたときのことをちょっと思い出してみましょうか。

どんぐりさん:え・・・と、昨日チームのミーティングで若葉さんと一緒でした。そのミーティングは今年のチーム目標を再確認するためにチーム全員が集まったんです。

あおぞらさん:チームの目標を再確認するミーティングにどんぐりさんも若葉さんも参加されたのですね?

どんぐりさん:そうなんです。ところがチームリーダーの毬栗さんの説明がすごくわかりにくくて。。。チーム目標の説明なのに、結局は自分の自慢話がほとんどで、いったい何の話なのかよくわかんないですよ。あれじゃあ。ほんと、疲れました。みんな仕事が忙しい中、集まったのに・・・。

あおぞらさん:それは大変でしたね。

どんぐりさん:で、毬栗さんの話が終わったとき、若葉さんが「みなさん、今年のチーム目標についてリーダーから説明がありました。わからなかったところはありませんか?」とスタッフに聞いてくれて。私はすかさず手をあげてしまいました。毬栗さんの自慢話にはいい加減嫌気がさしていたので、つい怒った顔で「リーダーの話では意味が通じません」って言ってやりました。

あおぞらさん:それで?

どんぐりさん:若葉さんは「私のほうから説明してもいいですか?」って毬栗さんに聞いて、そしてすごくわかりやすい説明をしてくれました。その後で「今の私の説明はリーダーの意図するところと何か違う点はありますか?」なんて、毬栗さんに再度確認をとっていました。何もそんなに毬栗さんを立てなくってもいいと思うんですけど、若葉さんは優しすぎます。

あおぞらさん:なるほど。どんぐりさんが言っていたように若葉さんは本当にコミュニケーション能力のある人ですね。

どんぐりさん:あ、そうか。コミュニケーション能力の話でした。ついつい若葉さんがとてもいい人なので、性格の話になりかけてました。

あおぞらさん:今の話の中で、若葉さんの言動にはすべて意図がありましたね。それぞれどんな意図だったかわかりますか?

どんぐりさん:えっ?いきなり問題ですか? つい話に夢中になってしまって、意図なんて考えてませんでした。。。意図・・・ですか? 若葉さんの。。。?

あおぞらさん:例えば、毬栗さんの説明の後で若葉さんはみんなが理解できたかどうかを確認していましたね? これは何のためだったのでしょう?

どんぐりさん:若葉さんがあのときみんなに聞かなければ会議はそのまま終了して、みんなチーム目標がなんだったのかよくわからないままそれぞれの業務にもどって、あとは仕事に追われてもうそのまんまになっていたと思います。それを予想して若葉さんは。。。ということは、若葉さんの意図は、チーム目標をみんなにきちんとその場で理解してもらうこと、だったんですね。

あおぞらさん:若葉さんから再度チーム目標を説明するときに、毬栗さんに「私から説明をしてもいいですか?」と聞いていましたね。それにはどんな意図があったのでしょうか?

どんぐりさん:え・・・と、もしも毬栗さんの同意なしで若葉さんが説明をし始めたらきっと毬栗さんは怒り出したと思います。そうしたら会議はもう途中で解散になったか、みんないや~な気分で現場に帰って目標なんて忘れちゃっていたかも。そっか、だから若葉さんは毬栗さんに同意をとってチームがばらばらにならないようにしたんですね。

あおぞらさん:では、若葉さんが説明の後で、リーダーの意図するところと違う点がなかったかどうかを毬栗さんに確認したのは?

どんぐりさん:リーダーを含め、全員が目標について理解を共有するため・・・?

あおぞらさん:そうですね。もちろん若葉さん本人に聞いたわけではないですが、そんな意図があったのではないでしょうか。

どんぐりさん:だとしたら、若葉さんすごい人ですね!

あおぞらさん:ええ。本当に素晴らしい人ですね。ところで、どんぐりさんは毬栗さんの説明に不満を感じ、怒って「意味が通じない」と訴えましたね。そのときのどんぐりさんの意図は?

どんぐりさん:あ・・・意図って言われても。強いて言えば、自慢話なんかじゃなくてもっとちゃんとみんなが理解できるような説明をしてもらいたくて。。。

あおぞらさん:なるほど。毬栗さんにもっとちゃんと説明をしてほしかったんですね。

どんぐりさん:はい。

あおぞらさん:で、どんぐりさんのとった態度は効果的でしたか?

どんぐりさん:効果的だったかどうかは、わからないです。そんなのわかるんですか?

あおぞらさん:ええ。わかりますよ。毬栗さんの表情や態度で。

どんぐりさん:・・・毬栗さんは私が抗議した後、憮然とした表情でした。そして何か弁解じみたようなことを言いかけて、と同時に若葉さんが「私から説明してもいいでしょうか?」って言ったんです。

あおぞらさん:ということは、毬栗さんは自分の説明がわかりにくかったことに対してはあまり反省はできなかったのかもしれませんね。

どんぐりさん:私の怒った態度は、私の意図をかなえるものではなかったんですね。

あおぞらさん:もしもどんぐりさんのその時の意図が、毬栗さんに嫌な思いをさせること、であったとしたら、逆にどんぐりさんのとった態度は意図を達成したと言えます。

どんぐりさん:はい。。。でも、毬栗さんを不愉快にさせる、という目的は達成しても、肝心のチームミーティングの目標からは離れてしまいますね。

あおぞらさん:そうなんです。

どんぐりさん:わかりました! まずは、そのときの意図や目的を考えてからコミュニケーションをとること、そしてその目的がさらにその上の目的に沿っているかどうかをチェックする、そんなことが大切なんですね。

あおぞらさん:その通りです! どんぐりさんは理解が深いですね。

どんぐりさん:それほどでは・・・(笑)

あおぞらさん:ところでこれまでお話してきたのは意識的なコミュニケーションでした。

どんぐりさん:え? どういうことですか? 意識しないコミュニケーションなんてあるんですか?

あおぞらさん:ええ。ありますよ。

どんぐりさん:それってどんなコミュニケーションですか?

あおぞらさん:例えば、どんぐりさんはさっき私の説明を身を乗り出して聞いていました。

どんぐりさん:え? そうでしたか? 気がつきませんでした。

あおぞらさん:人は興味があると自然と前傾姿勢になったりしますよね。どんぐりさんのその姿勢は私には「私の話を興味深く聞いてくれている」と映りました。そしてそれを私は「嬉しいな」と思いました。

どんぐりさん:そういえばあおぞらさん、途中で目がとてもやさしく輝いていました。

あおぞらさん:それも私の無意識のコミュニケーションですね。

どんぐりさん:なるほど。。。それを受けて私はますますあおぞらさんの話を好意的に聞いた。。。

あおぞらさん:無意識と無意識のコミュニケーションがおりなした状況ですね。

どんぐりさん:そう考えるとすごいですね。というか、怖いですね。だって今のはお互いに好意的な気持ちだったからいいけれど、自分が嫌いな人にはそれがばれちゃうじゃないですか。

あおぞらさん:そうですね。ばれます。

どんぐりさん:それは私が意図するところではありません(笑)。でも無意識なんだから隠しようがないですよね。。。どうしたらいいんですか?

あおぞらさん:まずは日頃からできるだけ意識することです。自分は何らかのメッセージを周りの人に送り続けている、ということを。例えば人から話しかけられたら、Welcome!っていう意思表示をするとか、すれちがったら軽く挨拶をしたり、会釈をしたり、笑顔を投げかけたり。

どんぐりさん:あ。。。若葉さんはそういえば、いつもにこやかです。すれ違う時もかならず笑顔で好意的な態度をします。意識していたんですね。

あおぞらさん:意識的であれ、無意識的であれ、コミュニケーションの達人はいつも意図を持っています。自分がいま何をしたいのか、どんな状況を作り出したいのか、それを考えながら相手の反応に柔軟に対応したコミュニケーションをしていきたいですね。

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